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代表的な疾患

腎細胞癌

1. 腎臓について

腎臓は、ソラマメのような形をした、成人の握りこぶしよりもやや大きい臓器です。
腹部に左右1つずつあり、背中側の後腹膜腔という場所に位置しています。
腎臓の主な働きは、血液をろ過し、尿をつくることです。
また、腎臓は血圧のコントロールや造血に関するホルモンの生成もしています。

図1 解剖
図1 解剖

2. 腎がんとは?

腎がんは、腎実質の細胞ががん化して悪性腫瘍になったものです。
同じ腎臓でも、腎盂にある細胞ががん化したものは「腎盂がん」と呼ばれ、別のものです。(尿路上皮腫瘍の項を参照ください)
写真は、最も一般的な淡明細胞型腎細胞癌の病理組織像です。

図2 Clear cell ca
図2 Clear cell ca

3. 症状

初期の腎がんには、特徴的な症状はありません。
最近では、他の病気の検査や健康診断などで、偶然に発見されることが多いです。
進行すると、血尿、腰背部の痛み、腹部のしこり、などが生じることがあります。
肺や骨に転移したがんが先に見つかり、その結果腎がんが見つかることがあります。

4. 疫学

腎がんは、50-60歳代に好発し、男女比はおよそ2:1です。
腎がんの罹患率は、男性 20.5人/10万人、女性 9.2人/10万人、
腎がんの死亡率は、男性 8.2人/10万人、女性 4.4人/10万人、
とされています。

腎がんの罹患率
図3 罹患率のグラフ
図3 罹患率のグラフ

5. 発生要因

肥満、高血圧、喫煙、長期透析 などが危険因子とされています。
遺伝子が原因で発症する場合もあります(von Hipple‐Lindau病、Burt-Hogg Dube症候群)。

6. 検査

腎がんは、主にCT検査、MRI検査などの画像検査で診断します。
画像検査で診断ができない場合には、針生検を行うことがあります。
腎がんでは、診断や治療効果判定に使用できるような、腫瘍マーカーはありません。

7. 治療

腎癌の治療は、手術と薬物療法 に大きく分けられます。
なお、小さな腎癌に対して、熱凝固術や凍結療法なども試みられています。

  1. 7-1. 手術

    1. (1) 腎部分切除術

      がんが生じている部位の腎臓を部分的に切除する術式です。
      主に4 cm以下の小さながんの場合に選択されます。
      がんの位置などによっては選択できない場合があります。

      腎部分切除術 術式別年次症例数
      図4 腎部分切除症例数
      図4 腎部分切除症例数
    2. (2) 根治的腎摘除術

      がんのある側の腎臓をすべて取り除く術式です。
      周囲の臓器や、血管内にあるがん(腫瘍塞栓)を摘除することもあります。
      術後、血液浄化療法が必要になる場合があります。

  2. 7-2. 薬物療法

    分子標的治療、免疫療法 などの、薬物療法を行います。
    現在、日本では下表のような治療が可能です。

    腎がんの薬物療法一覧
    種類 一般名 商品名 投与経路
    チロシンキナーゼ阻害薬 ソラフェニブ ネクサバール 内服
    チロシンキナーゼ阻害薬 スニチニブ スーテント 内服
    チロシンキナーゼ阻害薬 アキシチブ インライタ 内服
    チロシンキナーゼ阻害薬 パゾパニブ ヴォトリエント 内服
    マルチキナーゼ阻害薬 カボザンチニブ カボメティクス 内服
    mTOR阻害薬 テムシロリムス トーリセル 点滴
    mTOR阻害薬 エベロリムス アフィニトール 内服
    免疫チェックポイント阻害薬 ニボルマブ オプジーボ 点滴
    免疫チェックポイント阻害薬 イピリムマブ+ニボルマブ ヤーボイ+オプジーボ 点滴
    併用療法 ペンブロリズマブ+アキシチニブ キイトルーダ+インライタ 点滴+内服
    併用療法 アベルマブ+アキシチニブ バベンチオ+インライタ 点滴+内服
    図5 腎がん薬物療法

8. 当科の特徴

機能温存を目指し、腎部分切除術を積極的に行っています。
2021年より、最新機種da Vinci Xiによる手術を行っています。

図9 ダビンチXi
図6 ダビンチXi

尿路上皮腫瘍

尿のとおり道である腎盂・尿管・膀胱は、尿路上皮細胞でおおわれており、これらの部位に尿路上皮癌が発生します。
高齢男性に多く、喫煙や化学物質などが発症リスク因子となります。
肉眼的血尿や頻尿・排尿時痛などが初期症状です。

腎盂 尿管 膀胱
膀胱癌の内視鏡所見
膀胱癌の内視鏡所見

1. 筋層非浸潤性膀胱癌の治療

まずTURBT(尿道から内視鏡をいれて腫瘍を切除する手術)を行い、リスク分類に基づいて、追加治療を行います。


TURBTでは、癌細胞を選択的に発光させるPDD(光線力学診断)を積極的に使用し、治療成績の向上に努めています。

PDDにおける膀胱腫瘍の内視鏡所見
PDDにおける膀胱腫瘍の内視鏡所見

2. 筋層浸潤性膀胱癌の治療

尿路変更を前提とした膀胱全摘が標準的な治療です。
手術前後に抗癌剤治療も併用します。
手術支援ロボットを用いた腹腔鏡手術を積極的に行っており、従来の開腹手術よりも少ない出血量で手術が可能です。

回腸導管(小腸を用いた尿路変更)
回腸導管
(小腸を用いた尿路変更)
Da Vinci Xi  patient cart Adv Urol. 2016 PMC4762997
Da Vinci Xi patient cart Adv Urol. 2016 PMC4762997

高齢者や、併存疾患により膀胱全摘が困難と思われるかたに対して、血管カテーテルを用いた経動脈的な抗癌剤治療を行っています。

血管カテーテルを用いた経動脈的抗癌剤治療
血管カテーテルを用いた経動脈的抗癌剤治療
血管カテーテルを用いた経動脈的抗癌剤治療

3. 転移のない腎盂尿管癌の治療

腎尿管全摘と尿管下端の膀胱部分切除が標準的手術です。
腹腔鏡を用いた低侵襲手術により、少ない出血量で、手術翌日からの食事・歩行が可能です。術後1週間程度で退院できます。

転移のない腎盂尿管癌の治療

4. 転移を有する尿路上皮癌の治療

抗癌剤治療が主体となります。
2次治療として、ペムブロリズマブやアベルマブといった免疫チェックポイント阻害薬が投与されます。
これらの薬剤は、院内の外来化学療法室において、通院しながら投与ができます。生活の質を維持しながら治療ができるよう心掛けています。

前立腺癌

1. 前立腺について

前立腺は男性のみにある臓器です。
膀胱の下に位置し、尿道のまわりを取り囲んでいます。
前立腺は精液の一部に含まれる前立腺液を生成しています。

図1 解剖
図1 解剖

2. 前立腺がんとは?

前立腺がんは、前立腺の細胞ががん化して悪性腫瘍になったものです。
リンパ節や骨に転移しやすいです。肺や肝臓などに転移することもあります。
写真は、一般的な前立腺がんの病理組織像(Gleason score 4+4)です。

図2 病理の写真
図2 病理の写真

3. 症状

早期の前立腺がんは、多くの場合自覚症状がありません。
進行すると、尿が出にくい、残尿感 などの排尿の症状が出ることがあります。
また、骨への転移による痛みがみられることがあります。

図3 骨シンチの写真
図3 骨シンチの写真

4. 疫学

前立腺がんは、全国で1年間に約91,200人が診断されるとされています。

前立腺がんの罹患率
図4 罹患率の推移
図4 罹患率の推移

5. 発生要因

食生活(動物性脂肪)、加齢、家族歴などが危険因子とされています。

6. 検査

主な検査はPSA検査、直腸診です。
前立腺がんが疑われる場合には、経直腸エコー、前立腺生検などを行います。
がんの広がりや転移の有無は、MRI、CT、骨シンチグラフィーなどで調べます。

前立腺がん(MRI)
図5 前立腺癌MRI
図5 前立腺癌MRI

7. 治療

前立腺癌の治療には、手術と放射線治療(重粒子線治療)と薬物療法があります。
体の状態、年齢、患者さんの希望なども含め検討し、相談して決めていきます。

  1. 7-1. 手術

    前立腺と精嚢を摘出し、その後、膀胱と尿道をつなぐ前立腺全摘除術を行います。
    手術の際に前立腺の周囲のリンパ節も取り除くこともあります。
    がんが前立腺内にとどまっており、期待余命が10年以上と判断される場合に行うことが推奨されていますが、前立腺の被膜を越えて広がっている場合でも対象となります。当院ではロボット支援手術をおこなっています。

    ロボット支援下前立腺全摘除術 年次症例数
    図6 RALPの年次推移
    図6 RALPの年次推移
  2. 7-2. 放射線治療(重粒子線治療)

    放射線治療(重粒子線治療)は、高エネルギーのX線や重粒子線を照射してがん細胞を傷害し、がんを小さくする治療法です。
    外照射療法と、組織内照射療法があります。
    治療後に、尿道狭窄、血尿、直腸出血などが起こることがあり、治療が困難です。

    直腸出血の例
    図7 直腸出血
    図7 直腸出血
  3. 7-3. 放射線治療(重粒子線治療)

    内分泌療法は、男性ホルモンの分泌や働きを妨げ、がんの勢いを抑える治療です。
    化学療法は、がん細胞を消滅させたり小さくしたりすることを目的として行います。一般的には、転移があるがんで、内分泌療法の効果がなくなったがん(去勢抵抗性前立腺がん)に対して行います。

    種類 一般名 商品名 投与経路
    LH-RH アゴニスト リュープロレリン リュープリン 注射
    LH-RH アゴニスト ゴセレリン ゾラデックス 注射
    LH-RH アンタゴニスト デガレリクス ゴナックス 注射
    抗アンドロゲン剤 ビカルタミド カソデックス 内服
    抗アンドロゲン剤 フルタミド オダイン 内服
    抗アンドロゲン剤 クロルマジノン プロスタール 内服
    新規ホルモン剤 エンザルタミド イクスタンジ 内服
    新規ホルモン剤 アビラテロン ザイティガ 内服
    新規ホルモン剤 アパルタミド アーリーダ 内服
    新規ホルモン剤 ダロルタミド ニュベクオ 内服
    PARP阻害剤 オラパリブ リムパーザ 内服
    抗がん剤 エストラムスチン エストラサイト 内服
    抗がん剤 ドセタキセル タキソテール 点滴
    抗がん剤 カバジタキセル ジェブタナ 点滴
    ラジオアイソトープ治療 塩化ラジウム ゾーフィゴ 注射
    図8 薬物療法一覧

8. 当科の特徴

2012年より、ロボット支援下手術を積極的に行っており、300人以上の方が治療を受けられました。
2021年より、最新機種da Vinci Xiが導入されました。

尿路結石

腎・尿管・膀胱結石にたいし、内視鏡手術を中心とした低侵襲治療を行っています。

1. TUL(経尿道的砕石術)

  • 最新の細径軟性尿管鏡・レーザーを使用し、ほぼすべての部位の結石に確実な治療効果があります。
  • 2泊3日~3泊4日で可能です。
経尿道的砕石術

先端径が2mm程度のファイバーで腎・尿管に到達し、レーザーで細かく結石を破砕します。

経尿道的砕石術

2. PNL(経皮的砕石術)

  • 比較的大きな結石に対し、腎瘻を作成し内視鏡下に結石を破砕します。
  • 2週間前後の入院が必要です。
経皮的砕石術

大きい結石に対し腎に直接5-8mm程度の経路を作成し結石を破砕・摘出します。

経皮的砕石術

3. 尿路結石の年間治療件数

TUL PNL
2017年 78 26
2018年 98 15
2019年 72 41
2020年 72 16
・年間100件前後の内視鏡手術を行っています。

女性泌尿器科

QOL疾患である尿失禁や骨盤臓器脱に対する手術治療として、患者様それぞれの病状や合併症に応じて最適な治療を提案しています。
腹腔鏡手術や非メッシュ手術、今後ロボット支援下の骨盤臓器脱手術も導入予定です。

骨盤臓器脱

骨盤内臓器である膀胱、子宮、膣、直腸が膣口から脱出する疾患です。
骨盤臓器脱に対して、手術や手術以外のデバイスを用いた加療を行っています。

骨盤臓器脱とは?
骨盤臓器脱の治療について

手術療法

LSC
2014年から本邦にて保険適応となった術式です。腹腔鏡を用いて経腹的に前後膣壁にメッシュを固定し引き上げて仙骨に固定する術式です。今後、ロボットを用いた同様の術式も当科にて導入予定です。
膣閉鎖
腹腔鏡での手術が難しい患者様には経会陰操作で膣を閉鎖する術式も選択可能です。LSCと異なり膣口は閉鎖されますが身体への負担が低いこととメッシュを体内に入れる必要がないことが利点です。

腹圧性尿失禁

咳やくしゃみをした時や運動時などお腹に力が入った際に尿失禁を来す状態です。
薬物による内科的な治療や、メッシュを用いて尿道を支えるような手術を行います。

腹圧性尿失禁とは?

小児泌尿器科

生直後より大人へのcarry overまで小児泌尿器科疾患を取り扱っています。外科的治療を積極的に取り入れており、小児腹腔鏡下手術も行っています。
急性腎不全、小児尿路性器外傷、急性陰嚢症、性別判定不明瞭児などの救急疾患も対応します。また、性分化障害等による小児の外陰部形成術、腸管利用の尿路再建術も行っています。その他、二分脊椎症をはじめとする小児神経因性膀胱の下部尿路評価および加療、ダウン症児の排尿障害治療を行っています。

主な疾患の入院加療の目安

  • 内視鏡下尿道狭窄手術、停留精巣固定術・・・3~4日程度入院
  • 尿道下裂手術・・・約2週間入院
  • VUR手術・・・約1週間入院
  • 女児外陰部形成術・・・約10日間入院
  • 腸管利用膀胱拡大術・・・約3週間入院

精巣捻転症

片側の陰嚢領域に急性な痛みと腫脹をきたす。皮膚表面の発赤を認めることも多い。
一般に発熱は伴わず、嘔気・嘔吐、腹痛で来院することもある。急性虫垂炎、急性胃腸炎と間違わないよう、必ず外陰部の診察を行うことが重要。
捻転した状態で放置すると精巣が壊死してしまうため診察やエコーで否定ができなければ緊急で手術を行う必要がある。

精巣捻転を疑ったらその時点から絶飲水で至急泌尿器科へ

二分脊椎症の尿路管理

二分脊椎症では、神経障害により多くに排尿・排便障害を認めます。
排尿管理は間欠導尿を基本に排尿管理を行います。自排尿は腎尿路障害リスクが低いと思われる例外的なケースです。
尿路感染、腎機能障害(VUR)、尿失禁のコントロールが不良であれば外科的治療を行います。

腸管利用の非失禁型代用膀胱+臍導尿路

横紋筋肉腫等により膀胱全摘を余儀なくされた場合、非失禁型(導尿型)の代用膀胱は、小児では学校生活、日常生活でのQOLを高めます。当科では虫垂や会長を利用した導尿路の造設を行っています。
集尿袋をつけなくていいため、プールも問題なく入れます。