患者のみなさまへ

  • HOME>
  • 特色ある医療

特色ある医療

筋層浸潤性膀胱癌に対する
動注化学療法

はじめに、筋層浸潤性膀胱癌に対する標準的根治療法は膀胱全摘除術です。ただし、膀胱全摘除術は侵襲が大きく、尿路変更も必要となるため術後のQOLについても配慮が必要です。特に超高齢化社会を迎えた本邦では、手術が困難と判断される高齢患者さんは今後増えてくることが予測されます。

佐賀大学では高齢者や併存疾患により膀胱全摘除術が困難と考える筋層浸潤性膀胱癌患者さんに対し、動注化学療法を行っております。薬剤はエピルビシン(30mg/m²)、シスプラチン(70mg/m²)を用い、両側大腿動脈から血管カテーテルを留置し、内腸骨動脈内へ注入する方法で行います。患者さんによっては放射線照射も併用します。この治療により、膀胱温存ができた症例や血尿などのイベントを来さず経過をみることができた症例を経験しております。


著効した1例

動注化学療法 5ヶ月後 動注化学療法

治療成績

図1 高齢の筋層浸潤性膀胱癌患者さんにおける全生存率の比較
図1 高齢の筋層浸潤性膀胱癌患者さんにおける全生存率の比較

この図は、筋層浸潤性膀胱がんと診断された70歳以上の患者さんについて、治療法別に全生存率を比較したものです。
青線は動注化学療法、赤線は膀胱全摘除術、緑線は緩和的支持療法を示しています。

動注化学療法を受けた患者さんでは、緩和的支持療法のみの患者さんと比べて、生存期間が有意に長い結果でした(P=0.01)。
また、膀胱全摘除術を受けた患者さんでは、緩和的支持療法のみの患者さんと比べて、生存期間が有意に長い結果でした(P<0.001)。
一方で、動注化学療法と膀胱全摘除術との間には、統計学的に明らかな差は認めませんでした(P=0.08)。
図の下には、各時点で経過を確認できた患者さんの人数を示しています。

略語:
OS:全生存期間
P-IAC:動注化学療法
RC:膀胱全摘除術
BSC:緩和的支持療法


図2 高齢の筋層浸潤性膀胱癌患者さんにおける症状が出ない期間の比較
図2 高齢の筋層浸潤性膀胱癌患者さんにおける症状が出ない期間の比較

この図は、筋層浸潤性膀胱がんと診断された70歳以上の患者さんについて、動注化学療法を受けた患者さんと、緩和的支持療法を受けた患者さんで、症状が出ない期間を比較したものです。
青線は膀胱動注化学療法、緑線は緩和的支持療法を示しています。
ここでの「症状」とは、膀胱内での出血による血尿や膀胱タンポナーデ、救急受診や緊急入院が必要となる状態、またはがんの進行による死亡を指します。

動注化学療法を受けた患者さんでは、緩和的支持療法を受けた患者さんと比べて、これらの症状が出るまでの期間が有意に長い結果でした(P<0.001)。
この結果から、動注化学療法は、高齢の筋層浸潤性膀胱がん患者さんにおいて、症状の悪化を抑える可能性があると考えられます。
図の下には、各時点で経過を確認できた患者さんの人数を示しています。

略語:
SFS:症状が出ない期間
P-IAC:動注化学療法
BSC:緩和的支持療法

第76回西日本泌尿器科学会総会第76回西日本泌尿器科学会総会
第32回排尿機能学会